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help リーダーに追加 RSS 小川洋子著・冷めない紅茶

<<   作成日時 : 2007/05/09 10:19   >>

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「冷めない紅茶」・小川洋子著(初版’90年福武書店/’93年福武文庫)
※ 「ダイヴィング・プール」併集

小川洋子氏の小説を読んだのは’91年第104回芥川賞の「妊娠カレンダー」以来です。ずいぶんと前のことになります。姉の妊娠を観察する妹が主人公だったと思います。スーパーでデモンストレーション販売のアルバイトや歯医者で金冠を被せるだんになって…の歯科医院の描写はよく描けていると思いました。ただ最後の飛躍はよくわからなかった。全体的には、ひんやりした感じでした。「冷めない紅茶」は「妊娠カレンダー」より一年前の作品です。ここでも歯医者がちょこっと出てきます。小川氏の作品では病院の匂いが全体を包みこんでいると思います。
ソッファだとか壁に染込んだアルコールの匂い。ツンとしてスーッとした冷たさ。作品全体が静的に見えるのも上のイメージからであります。
もっとも、最近のものは読んでいないのでわかりません。

画像

「冷めない紅茶」は―その夜、わたしは初めて死というものについて考えた。―で始まります。主人公(私)は中学時代の同級生の葬式に行きます。(私)はちっとも悲しくない。
十年以上会っていない彼は(私)の記憶の中にある。だから(私)は彼の記憶を失うことがないのだから何も失う物はないと。記憶の中では誰も無機物だと考えるのです。むしろ通夜で会ったK君のほうが記憶を混乱させます。中学時代のKと目の前にいるKが重なり合わない。現在の時間が過去の記憶を消滅させてしまう。この作品の「死」は現象としての死でなく、死は記憶を純化させてしまうのだと思います。最後にK君の入れた紅茶がいつまでも冷めないのは、(私)の中でK君の時間が止ってしまったから、そう感じたのだと思います。熱帯魚、脳の立体模型、人体解剖図、ライオンゴロシ(植物)、図書室が作品を彩ります。現実と観念が行き来し幻想的な雰囲気の小説です。

「ダイヴィング・プール」は両親が孤児院を経営する娘の話です。リエという幼児の描写がよいと思います。下の部分などは幼児がむずがっている様がリアルであると思います。
おもちゃを取り合う小さなけんかが起こって、リエが泣きだした。わたしは窓を離れてリエを抱き上げた。彼女はしゃくり上げながら、わたしのブラウスのボタンのすきまに指を滑り込ませた。彼女は甘える時、よくこうしてか弱い指で胸を求めた。
―私の冷めない紅茶―
上の画像はJR相模線の西寒川駅(神奈川県寒川町)があった近辺です。今は公園になっています。線路沿いに歩道があります。昭和59年まで寒川駅から西寒川まで支線がありました。もうこの支線が廃線になってから二十年以上たっています。かってはレールの上に赤いディーゼル車が走っていたのです。幾多の夢や喜びや悲しみを運んでいたのでしょう。周りの景色がどんなに変わってもレールの上は昭和59年でストップしています。廃線跡は滅び行くものへの郷愁があります。車両の中で飲んだ缶コーヒーは今でも温かいままでありましょう。
西寒川は寒川駅から徒歩15分くらいです。本当は線路の上にぺんぺん草が生えていたり、駅舎に古い時刻表があったほうがもっとよいのですけれど。マニアには不満かもしれません。
GW中に行きました。「冷めない紅茶」は車中で読みました。昭和テイストがもう懐かしい時代のものになってきました…

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コメント(2件)

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小川洋子さんの「妊娠カレンダー」よかったですね。わたしも小川作品を読んだのはこの小説が最初でした。「冷めない紅茶」は未読なので読みたいです。古本屋さんで(せこい)小川作品をさがしてもないんですよね。なかなか。図書館でかりて読んだあと買いそろえようとふんばっています。というか新刊で買えよ〜という感じです。
ぶきおん
2007/05/29 21:17
コメント、ありがとうございます。私も図書館などで読んでみて、よかったら蔵書用に買うことはよくあります。同じようなこと、みんな考えますね。古本屋さんよいですね。リサイクル系のブック・オフあたりですとある種の作家、例えば赤川次郎なんかはすごくあるのですけれど、ない人は本当にありませんね。やっぱり残しておくものと、そうでないものを分けていると思うのです。古本屋でお宝探しはやめられませんねぇ。^^
マルジナリア
2007/05/30 00:20

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