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help リーダーに追加 RSS 夏目漱石著・こころ

<<   作成日時 : 2007/07/28 23:54   >>

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「こころ」・夏目漱石著(岩波文庫)

或る不良少年の感想文

先生、この感想文を読んでいらっしゃるということは、僕の番になったわけですね。ちょっとお願いがあるんですけれど、僕のは一番最後にまわしてください。お願いします。
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実は先生、夏休みにクラスのA子、仮に由紀としておきましょう。僕と由紀は伊豆に一泊旅行してきました。もちろん親には内緒です。でも心配しないでください。先生の思っているようなことはしていません。家出のリハーサルというか、そんなところです。課題図書は電車の中と旅館で読みました。二人とも読書は苦手なんですからね、読書しか出来ない状況でないと無理なわけです。由紀のは読まれましたか?彼女は何を書いているか、僕は知りません。家に戻っ
てからお互い別々に書いたのですから。ただ由紀の姿は可愛かったです。それだけが思い出でなんです。
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小説に出てくるお嬢さんは可愛らしい人ですね。「先生」のことを悪く言ったり疑ったりしませんもの。家でぶらぶらしていても何にも言わない。「先生」を頼りに信じています。結婚するならこ画像ういう女性がいいと思いました。たぶん由紀も僕を信じているとおもいますけれど。本当にいいお嬢さんだと思います。でも、こんないいお嬢さんを不幸にする「先生」は許せない。友情だとかエゴイズムだとか、いかにも義理と人情の男を演じていますけれど、残されたお嬢さんはどうなるんですか。首つるのは勝手ですけれど、自己満足のためじゃないですか。お嬢さんとKを秤にかけてKのほうを上にしたわけですよ。こんな男に見込まれたお嬢さんこそいい迷惑だと思います。「先生」とKは地獄で友情ごっこをやっていればいい。それになんですか、「私」に長々と遺書を書いたりして、あれは自己弁護そのもですよ。自分に同情してくれって言っているようなものじゃないですか。あきれました。明治男はもっと強いもんだと思っていましが、考えが変わりました。あんまり勉強ばかししていると頭が狂ってしまうんでしょうか。だから僕はあまり勉強しようとは思いません。
Kもひどい男です。「先生」に誘われてお嬢さんの家に転がり込んできたのに、「先生」の隣の部屋で手首を切って自殺するなどはめめしいではありませんか。「先生」も悪い。先にKからお嬢さんへの想いを告げられたからって、裏工作してお嬢さんと結婚してしまうんですから。ああいうときは堂々とお嬢さん争奪戦を始めるべきです。武者小路実篤の「友情」を読んだことがありますが、ちょっと似ていますね。いづれにしてもお嬢さんを譲る、譲らないなんていうのは酷い。お嬢さんは物ではないんですから。身勝手な二人には愛想をつかしました。僕はああいう人間にはなりたくありません。僕は由紀を幸せにします。絶対に。絶対にです。


僕は、「先生と私」が一番よいと思いました。次によいのは「両親と私」です。「先生と遺書」はみじめたらしくって嫌いです。「先生と私」は「先生」に陰りがあって探偵小説みたいです。得体の知れない「先生」に「私」が巻き込まれていくみたいでスリルがあります。「両親と私」の最後の場面、父の危篤と「先生」の謎の手紙は高波が前からも後ろからも押し寄せるようで不安のボルテージが上がっていくところが見事でした。下は気に入らないのでカッターで切り取りました。お嬢さんはこれからどうするのでしょう。それが心配です。
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先生、ここまでお読みいただいた所で、たいそう怒っていることと想像します。あと少し僕の話を聞いてください。僕と由紀の関係は先生しか知りません。ですから我々三人は秘密結社の社員みたいなものです。卒業するまで秘密にしてください。バレたときは二人で家出します。ウソじゃありません、本気なんです。僕はA大学に進学して官僚になって貧しい人や困っている人を助けたいと思います。そして由紀と結婚します。A大学に進学するのは僕と由紀のためばかしじゃありません。多くの人々の幸福にもつながるのです。ただ困ったことに一般入試では受かりそうにありません。推薦ですとなんとかなりそうです。問題は国語です。先生、お願いします。もう少しだけ評価をよくしてください。僕は必ずやります。みんなの幸福のために。
追伸

○ Kが言った言葉、「精神的に向上心がないものはばかだ」嫌いな男だけれど、今の僕にはよくわかります。目標に向かって進むことが、こんなににも素晴らしいと感じたことはありません。もっともっと、挫けそうになる僕の精神は鍛えてしかるべきだと思います。
○ 「明治の精神に殉死する」 ああ、なんて欺瞞に満ち溢れた言葉なんでしょう。こんなことを臆面もなく言う人間を僕は信用しません。人間は自分のために生き、自分のために死ぬのです。誰かのために生きたり死んだりすることは出来ません。僕は由紀が好きです。由紀も僕のことを好いています。それは自分のためにそうすることが幸福だからです。由紀も同じことです。この頃、愛国心が流行っていますけど、こんなものは嘘ぱちです。憲法を改正して再軍備再徴兵化をするための口実なんです。愛国心という言葉に騙されたらたいへんです。そのためにも僕は国に行かなくてはいけません。ですから先生…
○ 漱石はセピア色のインキを愛用していたそうです。僕は父から万年筆を借りセピアを詰め込み書いて見ました。少し生意気にやってみました。
○ 何卒、何卒、先生お願いします。

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