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<<   作成日時 : 2007/12/14 21:42   >>

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「河童・玄鶴山房」・芥川龍之介著(角川文庫)

〇 文芸的な、余りに文芸的な (昭和2年2月―7月)
   続文芸的な、余りに文芸的な (昭和2年5月) 
谷崎潤一郎と交わされた「小説」の筋をめぐっての論争。一言でいえば、「小説」の定義の問題だ。谷崎の論文は見ていないが、「話」らしい話のない小説も小説でよいと思う。あまりに範囲を狭めれば小説の可能性を狭める結果になるだろう。漱石の「猫」は話らしい話のない小説で作者がその気になれば延々と続くだろう。紅葉の「多情多恨」にしても心理描写は巧みだが話らしい話という点では希薄である。川端康成にしても「話」には曖昧な小説が多い。しかし全く「話」のない小説というものもないだろう。構造美を備えているか、いないかは小説の方法論の違いで、むしろ人間を描いているか、いないかが問題だ。「文芸的な、余りに文芸的な」は芥川の精神衰弱も激しい時期で、相手が谷崎なら甘い論理は突かれる虞があるので、芥川としては渾身の論駁であったろう。しかし、これは谷崎宛だけのものにあらず芥川の文学論でもある。文壇は固唾を飲んで注目していたことは想像に難くない。だが芥川の死によって永遠に中断された。 (12月12日読了)

〇 玄鶴山房 (昭和2年1月)
資産家堀越玄鶴一家の話。玄鶴の妾とその子供が同居することにより、微妙に家の均衡が崩れて行く。あら筋は省略。玄鶴は肺結核で付き添いの看護婦がいるが、私は本筋に影響を与えないこの看護婦(甲野という)に関心を持った。この一家は内乱が始まるが、感情を表に出さない冷戦で、いつも看護婦が柱の陰から冷笑している。人間は他人の幸福より不幸に関心があるのは本性で、まさに看護婦は代表的人物である。時には狂言廻しの役まで引き受ける。自分に類の及ばない活劇くらい面白いものはないかもしれない。この看護婦の登場がなかったら、この小説はつまらなかったかもしれない。 (12月12日読了)

以上「河童・玄鶴山房」・芥川龍之介著(角川文庫)より
目次 早春・馬の脚・春・温泉だより・海のほとり・尼堤・死後・湖南の・年末の一日・カルメン・三つのなぜ・春の夜・点鬼簿・悠々荘・彼・彼第二・玄鶴山房・河童・蜃気楼・学校友達・田端人・病中雑記・O君の新秋・夢・僕は・或社会主義者・春の夜は・追憶・「私」小説論小見・「わたくし」小説に就いて・明治文芸に就いて・小説作法十則・文芸雑談・今昔物語に就いて・文芸的な、余りに文芸的な・続文芸的な、余りに文芸的な

以下「舞踏会・蜜柑」(角川文庫)より

〇 東京小品
「鏡」、「下足札」、「漱石山房の秋」、3個の小品を集めたもの。それぞれ別個の物語。画像
(12月13日読了)

〇 尾生の信 (大正8年12月)
尾生は「びせい」と読む。
尾生の信:[この作品の典拠の故事に由来する故事成語で、固く約束を守ること。反面小さい信、愚直なことの意味にも用いられる。](角川文庫「舞踏会・蜜柑」注釈)
この作品は上の注釈どうり。人は待ち合わせの時間はどれ位が限度か?は週間誌によくあるアンケートだが、死ぬまで待てるだろうか。棚から牡丹餅は幻想だ、行動を起こさなければ何も起こらないかもしれない。しかし黄色で飛び出すのはいかにも危険だ。タイミングが大事だ。 (12月13日読了)

〇 じゅりあの・吉助 (大正8年8月)
備前の切支丹、じゅりあの・吉助の話。「長崎著聞集」ほか二冊、架空の書物に典拠を求め、架空の話を本当らしく見せていることろが妙案。 (12月14日読了)

〇 入社の辞 (大正8年3月)
大阪毎日新聞社入社の挨拶文。その前は海軍機関学校で英語の教師。創作に没頭できないから辞めたという。学校は一週5日、午前8時から午後3時までの勤務で人並みの給料は高待遇で羨ましい限りだ。(大正時代に週休2日制!)毎日新聞は人並みの給料の上、出社の義務がないというから、さらに高待遇だ。在宅勤務のはしり? (12月14日読了)

さて今度の文庫には「蜜柑」がはいっている。これは好きな作品だから、あとのほうにしよう。蜜柑、蜜柑…で思い出すのは、小学校の国語の教科書だ。何年生の頃だかはっきりしないが、たぶん3年か4年の新学期だと思う。ちょうど私の通っていた小学校は改築して、真新しい教室だった。鼻をつく塗料の匂いが教室に満ちていた。
その国語の教科書にこんな話があった。あるタクシーの運転手が女の子だと思うが、乗せたら車内に柑橘系のよい香りが満ちたというものだ。結末はどうなったか忘れてしまっている。もしかしたら蜜柑でなくて、夏蜜柑あるいはレモンだったかもしれない。誰の書いたものでなんと言うタイトルだかもわからない。ただ、その運転手の名前は松井さんということだけは覚えている。それで教室の匂いと蜜柑の匂いがセットになって記憶しているのだ。
匂いといえば尾崎翠だ。最近文庫が出たから読んでみたいと思う。お目当ては、「第七官界彷徨」と「アップルパイの午後」である。 (12月14日)

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