夢野久作著・犬神博士

「犬神博士」・夢野久作著(角川文庫)

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 犬神博士(本名・大神二瓶)が、波乱に満ちた幼少期を回顧する物語。小説の舞台は福岡で、ローカル色が濃くなっている。怪奇・探偵趣味はない。中盤が少々冗長である。犬神博士の女親は三味線、男親が唄の大道芸人の家庭で育つ。実は生みの親はわからず、今の両親に誘拐されたらしい。犬神博士(以降、チイと称する)は、女装させられ、両親の三味線と唄に合わせ、アネサンマチマチなる風俗壊乱の踊りで人気を博した。
 ある日、踊っているところを巡査に見つけられてしまったのが発端で、チイの運命は急展開する。両親とは離れ離れになり、官憲派と玄洋社による筑豊炭田の利権争奪戦に巻き込まれて行く。官憲派は福岡県知事を頭とし、三角(みすみ)、岩垣の両財閥と結託して、民衆の持っている炭鉱の利権を無償で取り上げる工作に出る。
 一方、楢山 到を頭とする玄洋社は壮士の集まりで、官憲派の横暴を阻止する動きに出る。美少年・チイは、先ず福岡県知事に気に入られ、引き取られることになったが、権力にものを言わす知事のやり方に反抗し、また育ての親と別れるのが嫌さに、親子三人知事のもとから逃げ出す。
 逃走途中でチイは両親と離れ離れになり、倒れているところを天沢老人に助けられた。天沢老人は、旧直方藩の御典医の家柄の出で、世間で評判の人格者である。老人はチイをダシに使って、知事と玄洋社の楢山に合って、大喧嘩が始まらぬうちに仲裁をし、両方に筑豊の開発をさせようと考えた。
 知事のチイ探索は、玄洋社側に知られるところとなり、知事との直接交渉の材料になるかもしれないと、玄洋社側は考え、こちらもチイの探索を開始していた。しばらくチイは天沢老人の元に滞在していたが、知事と玄洋社の喧嘩を止めさせるためにこしらえたおもちゃの短刀に魅せられて飛び出す。
 途中、玄洋社側の列車転覆計画をきっかけとした、両派の喧嘩に遭遇する。チイも喧嘩に参加するが、どちらの味方をするでもなかった。そのうちに両派がチイを生け捕りにしようと出たので逃げ出した。
 ある車井戸の近くの草原で小用をしていると、玄洋社の楢山が現れた。話をしているうちに、楢山のスケールの大きさにチイは惹かれて行った。二人は意気投合して、知事のいる青柳と言う料理屋へ横暴を止めるよう直談判に行くが…… 談判途中で台所から火事に。チイは逃げ出して走って、走って、走った……。

国と地方の筑豊炭田争奪戦を子どもの視線から批評した風刺的小説。小説は犬神博士ことチイの意思に関係なく、チイの存在そのものに両親から知事、楢山 到まで大人たちが翻弄されて進んでいく。未完の感あり。



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