国枝史郎著・神秘昆虫館

「神秘昆虫館」・国枝史郎著(昭和51年/講談社文庫)

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 永生の蝶、雌雄二匹の追跡をする鐘巻流の使い手、一式小一郎の父は田安家の家臣であるが、束縛されるのが嫌い、放浪性のある性質で仕官しない。時代は天保十一年である。父から永生の蝶の存在を知った小一郎は、好奇心に駆られて蝶を求め旅に出る。剣の腕前では小一郎に負けない使い手、恋のライヴァルでもある南部集五郎は一つ橋家の者であるが、同じく永生の蝶を求めて小一郎と争奪戦を展開する。田安家の女方術師・鉄拐夫人と一つ橋家の女方術師・蝦蟇夫人の確執、女頭領・弁天松代の七福神組さらに山尼の登場、永生の蝶の秘密を知っている昆虫館主人とその娘・桔梗の危機……。
永生の蝶をめぐって、一式小一郎を中心とした、それぞれの利害関係だけでも複雑な様相を見せているが、すべては謎のままである。作者は最初から謎解きを念頭に書いていないから大胆な発想ができたと感じる。ただ、こういうことが田安家と一つ橋家の間にかってあったようだ……というのが伝奇である。これを乱歩式に解決してしまうと、子供向けの物語に落ちる危険がある。不完全燃焼を逆手に取った小説だ。文章はテンポよく、殊に斬り合いの場面に生かされている。


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