コンビニに居た三島由紀夫

コンビニに居た三島由紀夫

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 画像は平成8年8月15日刊の新潮文庫であるが、一般書籍店ではなく、セブン・イレブン限定で販売されたものの一冊である。同時に江戸川乱歩、太宰治、芥川龍之介、松本清張ほか十人くらいがラインナップされたように記憶している。当時、アイス・ケースの上にこじんまりと置かれていたのを記憶している。
「憂国 橋づくし」は最近になってブック・オフで見つけたもので、多少の傷はあるけれども、むしろ三島の初版本より見つけるのが難しい本で、神田の古書店でも見かけた例がない。Pico文庫と命名された叢書であるが、おそらく半年も経たないうちにセブン・イレブンから姿を消したのではないかと思われる。これも全巻そろいで持っている人がいたら、かなりの古書価が付くのではあるまいか。三島に限らず他作家のも、まず古書店等でみることはないからである。
厚さは5㎜程度で、カバーなしの本で、文庫というより小冊子といったほうが似合う体裁だ。ラインナップされたものは、それぞれの作家の代表的短編で、おそらく全てが新潮文庫に存在するものであろう。因みに「憂国 橋づくし」は表題2作のほか、「海と夕焼」「百万円煎餅」の2編があるが、皆、新潮文庫「花ざかりの森・憂国」に収録されている。これは新潮社からセブン・イレブンに話を持ちかけたのではないかと想像する。というのは古い記憶をたどると、新聞にこれまで文学と無縁である若者に、まずは入門書ということで、弁当や雑誌を買いに来たついでに、本物の文学に触れてもらおうというもくろみがあって、興味が湧いてきたら本物の文庫に移行してもらい本の売り上げアップにつなげるという記事を、当時、読んだことがあるからである。
ただ、コンビニに出入りする若者が本を読まないというのは、誤った認識である。ただ、なんとなく、そう見えるだけなのだ。コンビニの販売網を利用して、なんでもやってみようというアイデアは感心するが、工夫が足りないのは、やっぱり文芸出版社の弱さであろう。既成の文庫からカットしただけでは売り上げに結びつかないのは当然で、一編は文庫未掲載のものを入れるとか、Pico文庫ならではの付録を付けるとかのアイデアが欲しかった。それに文豪の作品は不急不要のものでコンビニ向きではないの失敗の原因であろうと思う。むしろ新進作家のオリジナルを先行発売したほうがよかったかもしれない。セブン・イレブンに三島由紀夫本はパン屋のショーケースの一角に鯵の開き干しが置かれているような違和感を感じたものである。いずれにしても本屋で売っていなかったので、今となっては、見つけるのが困難な文庫である。


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